超高齢化社会の訪れが確実視されつつある現代日本。「介護老人保健施設」は、そんな時代の高齢者が“自分らしく”生きるため、そして介護者の負担を少しでも減らすための施設として、近年注目されています。
ただその認知度は、特別養護老人ホームよりも低いかもしれません。そこで今回は、介護老人保健施設について詳しく解説します。
介護老人保健施設とは「地域の弱点を担う多機能型入所施設」
介護老人保健施設とは、医療ケアならびにリハビリが必要な要介護状態の高齢者を受け入れる施設です。そこでは、医師の指示に基づいた看護師による医療ケアと介護士による介護、リハ専門によるリハビリ提供がメインに行われています。
他にもケアマネジャーや歯科衛生士、栄養士といった多職種との連携があり、チームとして利用者をアプローチできるのも介護老人保健施設の特徴です。
しかし、なぜここまで手厚いのでしょうか。それは、介護老人保健施設の掲げる目標が「入院などで一度自宅から離れた高齢者が、再び在宅で自分らしい暮らしを送れるようにする」であるためです。
介護老人保健施設は「廃用症候群」への不安を軽減させる場所
廃用症候群とは、「長期臥床(寝たきり)により、心身の活動性が低下してきたことにより引き起こされる病的状態」と定義されています。脳梗塞や重い疾患で1週間の寝たきりになった場合は15%、3~5週間では50%もの筋力が落ちると考えられています。[注1]
そしてこの症状は高齢者に出やすく、退院後に筋力が衰えてしまうことで入院前に行なえていたことが出来なくなり、生活が不便になるケースも少なくないのです。結果として、入院前のような自分らしい生活を送れなくなることもあるようです。
ただ、1回の平均入院日数が短期化されつつある現代日本の病床事情[注2]では、高齢者も病状が回復すればすぐに退院となってしまいます。介護老人保健施設は、医療ケアやリハビリを通して、高齢者の入院中に起こる「廃用症候群」や退院後に関する不安を軽減させる場所でもあるのです。
施設に入所する期間は様々ですが、一定期間でリハビリを行い退去するのが前提となっているのが特徴です。「今まで住んでいた地域で最後まで暮らしていたい」と願う高齢者は、少なくありません。介護老人保健施設は、そんな高齢者の願いをかなえるための施設でもあります。
[注1]LIFULL介護:廃用症候群│1週間の寝たきりで15%の筋力低下も
[注2]ニッセイ基礎研究所:入院の短期化-平均在院期間短期化の背景には何があるのか?
介護老人保健施設と介護老人福祉施設の違い
高齢者が利用できる施設は数多くあります。その中で介護老人保健施設と混同しやすいのが、「介護老人福祉施設」(通称、特別養護老人ホーム)です。
両者の違いを表にあらわすと以下のようになります。
介護老人保健施設 | 介護老人福祉施設 | |
利用可能な条件 | 65歳以上で要介護1以上 ※施設によっては、「病状が安定しており入院の必要がないこと」「感染症にかかっていないことなどを入居条件に加えていることもある |
65歳以上で要介護3以上 |
サービスの内容 | 在宅復帰に向けたリハビリ・医療ケアがメイン | メインとなるのは、日常生活における身体介護 |
月ごとに費用目安 | 月額10~20万円 (施設によって異なる) |
月額5~15万円 (施設によって異なる) |
入居期間 | ・短期入所 ・短期集中リハビリテーション ・長期入所 と選べるケースがある 平均して3~6ヵ月前後 |
終身利用可能 |
在籍職員の数 | 入居者100名に対し ・常勤医師1名 ・看護職員9名 ・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれか1人 ・介護職員25人 ・ケアマネジャー(介護支援専門員)1人 の配置が義務づけられている |
看護職員3名以上の配置が基本 医師常駐の義務はなし |
入りやすさ | 比較的入りやすい | 数か月~1年以上待つ場合あり |
介護老人保健施設を利用するまでの流れ
介護老人保健施設は、比較的入りやすいことで有名です。しかし申し込みから入所判定が出るまでは、数週間かかる場合もあるため、希望する場合は早めの準備が必要となります。
以下が、一般的な入所までの流れです。
手順 | 詳細 |
---|---|
1.介護認定を受ける | 介護老人保健施設に入所する条件は「65歳以上、要介護1以上」。施設によっては細かく条件が追加されている場合があるため、注意が必要。 |
2.入所申し込み | 希望する保健施設に申し込みをする。入院している場合は医療ソーシャルワーカー、在宅を利用している場合はケアマネジャーに相談すれば進めてもらえる |
3.施設の職員等と面談 | 要介護度、入所希望者の現在の身体状況、生活の様子、医療ケアの有無などが確認される |
4.書類提出 | 入所に必要な書類を提出する。診療情報提供書や看護サマリーなどが必要だが、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーが揃えてくれるケースも少なくない |
5.入所判定 | 総合して入所可能かどうかを判断される |
6.判定合格後、契約 | 入所可能と判断され場合のみ、契約する |
介護老人保健施設は今後の日本において必要不可欠な場所
高齢化に伴い高齢者の数が増える一方病床数は減り、在宅療養を余儀なくされる日本において、介護老人保健施設は病院と在宅の橋渡し的な存在といえます。
「歳を重ねても自分らしく生きていたい」と考える高齢者は多いです。介護老人保健施設は、そんな高齢者の方々の願いをかなえてくれる場所だといえます。
山梨県で退院後のリハビリ先を探している方は、ぜひ医療法人燦生会 フルリールむかわまでご連絡ください。
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